書籍紹介
- タイトル：英語学習の新常識
- 著者：和泉伸一
- 出版社：大修館書店
学校でまじめに英語を勉強していたはずなのに、外国人とうまく英語で話せない。そんな経験のある方は多いのではないでしょうか。本書は最新の第二言語習得理論に基づいた英語学習方法が、一般の英語学習にとってわかりやすい内容でまとめられており、これまで常識だと思っていたことが実は違っていたという新たな気づきを多く得ることができます。本書が教えてくれることについて印象的だったものを一部抜粋して紹介します。
本書が教えてくれること
文法を完璧にやる必要はない
学校では、文法説明に重きを置いた教育が行われていますが、本書では例文重視を薦めています。まずは大量のインプットで英語の型に慣れること（文法的説明は脇役でOK）。
これは、第二言語習得理論におけるクラシェンの「インプット仮説」に基づいた考え方で、私たちは「自分が理解できるレベルの英語」にたくさん触れることで、言語を自然と吸収していくのだそうです。
単語帳よりも、文脈の中のことば
単語帳はあくまで補助教材。単語帳の暗記をメインにするのはやめるべき（受験勉強でやってました）。
単語は文脈の中で意味が変わるので１つの意味だけに捉われてはいけない。また、単語帳の中の例文に注目すべきだそうです。
リスニングやリーディングで知らない単語に遭遇したときの対処方法を身につける意味でも、最初に単語から覚えておくべき、というわけでもない。最初は単語の予習なしで文章を読んで大まかなポイントをつかみながら、後で単語の意味を調べて理解を深めるのが効果的だそうです。英語の多読でも推奨されている方法ですね。
日本でも英語コミュニケーション力は鍛えられる
学校の授業外で豊富なインプットを吸収し、適度にアウトプットを行うことで日本でも英語コミュニケーション力は鍛えられるとのこと。インプットは多読と多聴がおすすめだそうです。
本書内でいくつかお勧めの教材を取り上げてくれていますが、なんでもいいので自分の興味にあったもの、自分の英語レベルに合ったものを選ぶのが大事だそうです。
「日本人発音でもOK」通じることが大切
「ネイティブのような発音じゃないと意味がない」と思いがちですが、本書ではその考えにも一石を投じています。
発音は「通じる」ことが目的であって、「真似すること」ではない。
母語の影響が出るのは当たり前で、日本語話者としての英語でもまったく問題はない（ただし、カタカナ発音だと全く通じないのでNG）。大事なのは、「何を語るか」。
実際、アジアやアフリカ、ヨーロッパなど英語が母国語でない国の方々も当たり前のように英語を話しますが、それぞれ母国語の影響で独特のアクセントがありますよね。
第二言語習得についての新常識
第二言語習得に関する“よくある誤解”にも触れられています。
- 「子どものうちに始めないと手遅れ」は幻想
- 「留学すれば自然と英語が話せるようになる」も幻想
- ネイティブを目標にする必要はない。世界ではノンネイティブの人が堂々と英語でスピーチしている
英語を身につけるのに必要なのは、年齢ではなく、質と量をともなったインプット。
また、「間違うことは成長の証」と繰り返されており、失敗に寛容になる姿勢も印象的でした。
受験英語と実践英語は違わない
受験英語と実践英語の隔たりは少ないので、実践的な英語勉強をしたほうが良い。大学英語入試はどんどん実践的に変わってきている。大学独自の試験だけではなく、民間試験（TOEFL, IELTS）を受験に活用する大学も増えてきている。
伝統的な受験勉強をしてきた学生よりも、英語を体験する（視聴や読書、SNSを通した交流など）ことで学習してきた人ほど４技能にわたって自分の英語能力に自信を持っており、入学も英語がどんどん伸びる傾向にあるそうです。
こんな人におすすめ！
- 英語をあらためて勉強したいと考えている人
- 子どもの英語を伸ばしたいと考えている人
まとめ
一部紹介させていただきましたが、本書には他にもたくさんの「新常識」が紹介されています。
これまでの常識と対比させながら新常識をひとつひとつ紹介していくので非常に読みやすかったです。
また、第二言語習得理論に基づいているものの、難しい理論の説明は一切なく、英語能力向上のためにどうするのがいいかにフォーカスして書いてくれています。英語学習をやり直したい人だけでなく、子どもへの英語教育について悩んでいる親にもおすすめの１冊です。
